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休日の電話待機時間は全て手待ち時間(労働時間)か?

column

2020年07月15日

社会保険労務士法人味園事務所 特定社会保険労務士 味園公一

7月に入り、新型コロナウイルス感染症に罹患した人数が増えています。特に東京都では4日連続100人超を記録し、「第2波か?」と心配させられます。早くワクチンが流通することを祈ります。皆さまご自愛ください。

さて今回は、休日中に顧客からかかってくるかもしれない電話対応業務のために待機をしている時間についてご紹介します。

電話待機時間の運用について

Q:質問事項

当社は機械の保守点検を行う会社です。一部の顧客より、一定期間を限定して、休日に機械の不具合が発生したときの電話応対を依頼されました。社員には、会社から携帯電話を貸与し電話の受電待機を命じましたが、電話に出られる状態であれば場所はどこでも良いと指示しています。また、電話には直ちに対応できなくとも、折り返し連絡をし対応することでも良いがあまり対応が遅くならないようにとも伝えています。

現在は、その担当になった社員のその日については休日出勤とせず、顧客から電話があってもなくても日当2,000円の手当を支給しています。

なお、電話での対応では解決せずに、顧客に出向いて修理等作業をした場合は休日出勤として取り扱っています。

この運用で間違いないでしょうか?

A:回答

ご承知のことと存じますが、顧客からの呼び出しに応ずるため携帯電話を所持して待機している時間は、使用者の指揮命令下にある等一定の要件のもとに、いわゆる「手待ち時間」として労働時間と扱うのが一般的な考え方です。

しかし今回のケースでは、待機場所の限定はなく、何をしていても自由という点では拘束性の度合いはかなり低く、全て労働時間として『通常の賃金』を支払うべきという考え方には若干の違和感を覚えます。

手待ち時間に関して、セルフガソリンスタンドで監視業務に従事する労働者が、お客様対応や当日のシフトの状況により休憩時間中であっても業務に従事する必要があり、ひどい時には食事がとれず、トイレに行く時間もなかったとして、当該時間分の賃金を請求する裁判(クワトロ事件_東京地裁H17.11.11判決)では、休憩時間の自由利用が阻害されていることと、勤務場所を離れることができず拘束性が高いとして、労働者が主張する手待ち時間を認定し賃金支払いを命じています。

そもそも休日(休憩も同様の考え方)とは、休息のために労働から完全に開放されることが保障されている日(休憩の場合は時間)のことを言います。このような自由利用の保障のない時間帯は、手待ち時間とされ労働時間と同様に通常の賃金支払い義務が発生します。

ご質問の件については、この電話を待っている(このケースでは「待っている」とは言えないと思いますが...。)時間が「手待ち時間」に当たるか否かがポイントとなります。

「手待ち時間」に当たるか否かは、待機場所に制限があるか、待機中に居眠りをしてはいけない等一定の制約があるか、待機中の過ごし方について強く拘束されているか、緊急対応の頻度が多いか等により判断をします。

今回のケースでは、自由な場所で、何ら制約もなく自由に行動してよい状況であり、かつ顧客からの電話が必ずあるわけではない等により、会社からの指揮命令下にある状態とはいえないため、手待ち時間ではないと考えます。

裁判例では、ガス管からガスが漏出した際に復旧工事を担当する会社が、修理依頼がある場合に備えて社員に対して、シフト制により工事対応を義務づけていた際のシフト担当の労働時間性が争われた事案があります。判決では、シフト担当時間に比較して実労働時間が極めて少なかったこと、労働者はシフト担当時間に寮の自室でテレビを見たりパソコンを操作したりするなどし、かつ、外出の規制もなかったことなどの事実を認め、「原告ら従業員は高度に労働から解放されていたとみるのが相当である」とし、労働時間性を否定したものがあります(大道工業事件_東京地裁H20.03.27判決)。

本件まずは、実際に電話対応した時間があったのか、その対応した時間はどのくらいか?をご確認する必要があります。顧客と電話対応をした時間は当然に労働時間となりますので、当該時間分の賃金(割増賃金が発生する場合はそれを含む。)の支払をするためです。

なお、単に待っている時間(繰り返しますが、本件ケースは「電話を待っている時間」にも当たらないと考えます。)に対して、2,000円/の日当を支払うことについては、携帯電話を1日中持たせるために多少の緊張を与えることに対する手当を支払うという意味で、問題ないと考えます。

以上のことから、①顧客と電話対応を行った実労働時間に対しては、割増賃金を含め当該時間分の賃金を支払う。②その他の時間については「手待ち時間」とはせず労使合意のもとに一定の手当を支払う、ということで運用上問題がなく、トラブルを回避することもできると思います。

もちろん、これ以外に法令を逸脱しない範囲内で、労使協議の上で解決法を決定することもできますが、いずれにしても前述した「手待ち時間」の判断材料に鑑みて決定していただくようお願いします。

参照文献等 : 全国労働基準関係団体HP

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