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副業・兼業のガイドラインが改定されました

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2020年10月28日

社会保険労務士法人味園事務所 特定社会保険労務士 味園公一

ちょうど1年ほど前にもテーマとして取り上げた「副業・兼業」について、厚労省は先月9月1日に『副業・兼業の促進に関するガイドライン』を改定しました。コロナ禍にあることも相まって、副業・兼業を希望する者は年々増加傾向にあります。

今回は、この改定されたガイドラインについて、その一部をご紹介します。

副業・兼業の現状

少し古い数字ですが、中小企業庁が実施した「平成26年度兼業・副業に係る取組実態調査」によると、副業・兼業を認めていない企業は全体の85.3%でした。副業・兼業が進んでいないように見受けられますが、先述の通り、コロナ禍において本業が休業する等により副業・兼業を希望する者が増えているようですので、現在はもう少しその割合は減少しているかもしれません。

副業・兼業を行う理由としては、以下のものがあるようです。

①収入を増やしたい
②1つの仕事だけでは生活できない
③自分が活躍できる場を広げたい
④様々な分野の人と繋がりができる
⑤時間のゆとりがあるから
⑥現在の仕事で必要な能力を活用・向上させることができるから

過去の就業規則では、「従業員の副業、兼業については、会社はこれを禁ずる。」と記載されていることが多かったのですが、裁判例では、「労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは、基本的には労働者の自由」との見解が示されています。会社が副業・兼業を制限することについては、以下の場合でなければ許されないとされています。

1)労務提供上の支障がある場合
2)業務提供上の支障がある場合
3)競業により自社の利益が害される場合
4)自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合

労働時間管理について

労基法第38条第1項では、「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。」と規定されています。労働基準局長通達(S25.5.14基発第769号)では、この「事業場を異にする場合」とは事業主を異にする場合を含むとしています。

これにより、副業・兼業している場合、各々の事業主が労働者の申告等によって、会社(事業場)における労働時間と他の会社における労働時間とを通算して管理する必要があります。

労働時間を通算し時間外労働となる部分には割増賃金の支払いを要しますが、今までは会社Aと会社Bの労働時間を、労働者の申告により各々把握して合算をし、時間外労働となる時間がある場合には、AまたはBのうち当該労働者との労働契約を時間的に後から締結した会社が割増賃金を支払うことになっていました。

上記方法に関しては、双方の会社に手続き上の負担が発生することから、労働時間の申告等や通算管理における労使双方の手続上の負担を軽減し、法に定める最低労働条件が遵守されやすくなる簡便な労働時間管理の方法(管理モデル)での対応が可能となりました。

管理モデルは、副業・兼業の開始前に、当該副業・兼業を行う労働者と時間的に先に労働契約を締結していた会社Aの事業場における法定外労働時間と、時間的に後から労働契約を締結した会社Bの事業場における労働時間(所定労働時間及び所定外労働時間)とを合計した時間数が単月100時間未満、複数月平均80時間以内となる範囲内において、各々の会社の労働時間の上限をそれぞれ設定し、各々がそれぞれその範囲内で労働させることができるというものです。

また、 会社は自らの事業場における法定外労働時間の労働について、会社Bも自らの事業場における労働時間の労働について、それぞれ割増賃金を支払えば足ります。これにより会社A及びBは、副業・兼業の開始後においては各々あらかじめ設定した労働時間の範囲内で労働されば、他の使用者の事業場における実労働時間を把握する必要なく労基法を遵守することが可能となりました。

労働時間管理について

なお、労働時間を通算する場合で、労働者本人の申告により、時間外労働をした事実を会社が知らなかったときは、割増賃金を支払わなかった場合でも罰せられないことになっているようです。

おわりに

繰り返しますが、コロナ禍において業績が下がっている会社の中には、1日に複数の会社で労働するタイプの副業・兼業ではなく、自らの所定労働日を減らして、それ以外の日に副業・兼業をさせることにより、労働者の賃金総額が下がらないように対処している会社もあると聞きました。

副業・兼業の運用にあたっては、長時間労働、会社への労務提供上の支障や業務上の秘密の漏洩等を招かないよう留意しつつ、雇用されない働き方を含め、その希望に応じて幅広く副業・兼業を行える環境を整備することが重要です。

参照文献等 :厚生労働省HP

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