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同一労働同一賃金に関する最高裁判決

column

2020年11月11日

社会保険労務士法人味園事務所 特定社会保険労務士 味園公一

令和2年10月13日と同15日に、旧労働契約法第20条(以下「労契法20条」という。)に関する重要な最高裁判決(メトロコマース事件、大阪医科薬科大学事件、日本郵便事件)が出されました。正社員と非正規社員間での労働条件の格差に関するものです。

今回はこの中でも特に企業が注目していると思われる、大阪医科薬科大学事件(以下「本件事件」という。)の賞与に関して紹介します。

旧労契法20条の趣旨

旧労契法20条は、『無期契約労働者(正社員)と有期契約労働者(非正規社員)との間で、期間の定めがあることにより不合理な労働条件の相違を設けることを禁止』したものです。現在はパート・有期雇用労働法第8条に継承されています。

この労働条件とは、給与や休暇など狭義の労働条件のみならず、災害補償、教育訓練、福利厚生など労働者に対する一切の処遇が含まれます。

労働条件の相違に合理性があるか否かは、次の①から③に鑑みて、個々に判断されることになっています。

➀職務の内容(業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度)
 ⇒労働者が従事する業務内容及び当該業務に伴う責任の程度

②当該職務の内容及び配置の変更の範囲
 ⇒昇進昇格、転勤などの人事異動等、人材活用の仕組みの有無や範囲

③その他の事情
 ⇒合理的な労使の慣行などの諸事情など

本件事件の概要

本件事件は、1年間の有期労働契約を締結し、勤続年数が約3年2か月(最後の約1年は適応障害により休業)であった、大学薬理学教室内の秘書業務に従事していたフルタイムのアルバイト職員が、正職員との

  • 基本給
  • 賞与
  • 夏期特別休暇
  • 業務外疾病による欠勤中の賃金の格差

について争っていたもので、第一審で大阪地裁はその請求をすべて棄却しました。これに対し大阪高裁では、賞与、夏期特別有給休暇及び私傷病欠勤中の賃金の3点について、アルバイト職員を対象外とすることは不合理(但し賞与は正職員の60%を下回る部分、私傷病欠勤補償は雇用期間1年の4分の1を下回る部分)としました。

このうち、賞与と私傷病欠勤中の賃金のみが最高裁の審理対象となり(その他の事項は高裁判断で確定。)、いずれも不合理でないとの判断がなされました。

最高裁の判断

最高裁は、賞与支給の目的を「正社員としての職務を遂行し得る人材の確保やその定着」とし、さらに同職種の正職員とアルバイト職員とは、職務の内容も配置の変更の範囲も相違していることに加え、「その他の事情」として、アルバイト職員には契約職員(正職員とアルバイト職員との中間職)や正職員への段階的な登用試験制度が設けられていたことなども加味して、賞与の不支給は不合理でないと判断しました。

アルバイト職員の職務内容は「相当に軽易」であったこと、更に雇用契約の更新状況をみても長期雇用を前提としたものではないことなどが前提の判断ですので、諸事情が異なれば結論が変わる可能性は大です。

判決では、「アルバイト職員の年収額が同時期に新規採用された正職員の約55%であったことも踏まえても、賞与不支給は不合理ではない。」としていますが、これも正社員の55%程度の年収を支払っていれば、非正規社員に賞与を支給しなくても良いというものではありません。今回の判決は、個別具体的な様々は事情に照らしてのものであり、あくまでも本件事件での判断であることを忘れぬようにしましょう。

判決を踏まえた企業の対応

弊所のお客様からも、「同一労働同一賃金により、パートタイマーや契約社員にも賞与を支給しなければならないのか?」との問い合わせがあります。今回の判決を踏まえれば、一定の要件を満たしている場合は賞与を支給しなくとも良いということになります。

正社員と同額と言わずとも賞与を支給することは、労働力人口が減少傾向にある中にあって、非正規社員であっても優秀な人材を確保するために有効な手段と考えます。しかし、今まで不支給であった賞与を直ちに支給できる企業は限られます。

会社が非正規社員に賞与を支給できないのであれば、以下のような対応が必要であると考えます。貴社ではいかがでしょうか?

  • 非正規社員の職務内容は、正社員のそれに比し「相当に軽易」であるといえるものである。
  • 仮に正社員と同じ職務内容であっても、責任の度合いや権限が明確に違う。
  • 非正規社員の労働時間は、フルタイムではない。
  • 非正規社員の雇用契約に(例えば5年等の)上限があり、長期雇用を前提としていない。
  • 正社員への登用制度があり、正社員転換している実績がある。
  • 非正規社員には異動、配置転換がない。
  • 正社員との労働条件の相違を、非正規社員用の就業規則で明確に規定している。

参照文献等 :最高裁判所HP

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