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コンピュータと熱暴走との戦い

column

2021年05月19日

合同会社エムアイティエス代表 水谷哲也

映画「サマーウォーズ」(細田守監督)では乗っ取られてしまった人工知能・ラブマシーンと対決するためスーパーコンピュータを用意して戦いました。信州上田にある屋敷の和室に置かれたスーパーコンピュータを冷やすために使ったのが大量の氷柱。ところが亡くなったお祖母ちゃんの遺体保存のために親族が氷柱を持ち出したため熱暴走が起き、敵を取り逃がしてしまいます。

熱暴走とは

熱暴走とは文字通り熱による不具合です。パソコンやサーバに入っているCPUが熱をもつため、そのままにしておくと動作が不安定になりエラーが頻発するようになります。特にゲームなどをしているとCPUに負荷がかかった状態が続くため熱暴走しやすくなります。

熱暴走対策

対策としてパソコンなら換気がよい環境において、空気が通りやすくします。また低電力モードでパソコンを使うよう設定すれば発熱を下げることができます。デスクトップ型なら冷却ファン周りのホコリはこまめに掃除しましょう。

サーバ対策としてはサーバを設置している部屋に空調をつけて夏も冬も一定温度に保ちましょう。昔、オフィスに空調が普及していない時代、汎用機が設置された電算室だけには空調がありましたので、暑い夏になると電算室で、よく涼んでいました。

パソコンの熱暴走を防ぐためのグッズの一つがパソコンを置く冷却台。付属するファンによって空気を送り込み、パソコン本体の温度を下げます。一番安直な方法はウチワであおぐことと扇風機です。フェースブック社では創業時、サーバの過熱を防ぐために急いで量販店へ扇風機を買いに行っていました。ITベンチャーの多くが経験するアルアルです。

スーパーコンピュータ「富岳」は、「京」の4倍のCPUを搭載しているため、ラック当たりの発熱は「京」の約6倍となっています。冷却しなければあっという間に1,000度を超えてしまいます。そこで流路を計算した水冷ユニットを取り付けて少ない流量で効率的に冷やせるように工夫しています。富岳では水冷90%、空冷10%で冷やしています。ですが冷却水を作るのに必要な冷凍機、熱交換機、ポンプなどで一大施設になっています。

Googleはフィンランドにデータセンターを設置

データセンターとなると熱暴走対策がさらに大変。データセンター内には大量の電子機器があり、データセンターでの消費電力が全世界の1%を占めていると言われています。当然、冷やす費用もバカになりません。そこでGoogleは温度が低いフィンランドにデータセンターを設置しています。

ロシア国境近くにあるハミナで古い製紙工場を購入しデータセンターに改造しました。データセンターの建物はフィンランド湾に面しており、製紙工場時代には海水を工場内に引くトンネルが使われていました。この海水トンネルを再利用し、冷たいフィンランドの水でサーバを冷却しています。

富士通はサーバを丸ごと液体に浸して冷やす

富士通では、液浸冷却システムを開発しています。液浸冷却システムとはサーバを丸ごと液体に浸して冷やす斬新なやり方です。省エネ大賞を受賞した技術で、空気で冷やすのに比べて数十倍から数百倍の冷却能力があります。

またゆっくりした流れで冷やすことで冷却ファンやエアコンがいらなくなり、結果として電力削減になります。冷媒となる液体は電気を通さず、サーバ機器に悪影響を及ぼさないのですが見た目はまったくの水。水中にサーバの機器を沈めるイメージとなります。技術者の一人が誤ってスマホを液体の中に落としたことがありましたが、何の問題もなくスマホが使えました。

また相変化冷却という新しい技術も登場しています。これは、冷媒が液体から気体に変化する際に熱が移動する現象を応用した冷却方法。早い話が打ち水をすると涼しくなる原理を応用したものです。

ビッグデータ、AI、DXなど電子機器を使う機会がどんどん増えており、これからも熱暴走との戦いが続きます。

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