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給与規程の改定に関し、あれこれ感じたこと(その①)

column

2021年09月08日

社会保険労務士法人味園事務所 特定社会保険労務士 味園公一

来年4月1日から、中小企業に対してもパワーハラスメント法規制が適用されます。これら法改正に対応する等のため、就業規則の改定は随時行っていることと思います。対して、一般的に別規程とされている給与規程はどうでしょうか?運用実態と乖離してはいませんか?今回は給与規程の改定作業に携わってみて、感じたこと(ポイント)を紹介します。

給与規程改定のポイント

給与・賞与、退職金に係る規定は、就業規則の中に規定する場合もありますが、一般的に条項が多く給与等に係るページ数が多くなります。そこで、給与・賞与については『給与規程』、退職金については『退職金規程』として別規程に定めます。

今回、ある会社の給与規程を改定してみて、「もう少し改良したら良いなぁ。」と感じたところを綴ってみたいと思います。

労働基準法等の法規制

給与(法では「賃金」)に関する法規制は、労働基準法と最低賃金法です。

労働基準法 第24条

1)通貨払い、2)直接払い、3)全額払い、4)毎月一回以上払い、5)一定期日払い。

給与規程でいうと、1)の通貨払いは当然のことですが、今後、給与をデジタル払いするような時が来れば、その旨の規定が必要です。2)については、金融機関口座への振り込みについて規定しておきましょう。3)については、例外の賃金控除(所得税等)について規定します。4)及び5)は給与計算期間(締め日)、支払日の関係を規定しておきます。その他、給与の決定・計算の方法(基本給や手当の定義、割増賃金や不就労控除等の計算式)を規定すれば、法の要件を満たします。

最低賃金法

こちらは皆さんご承知の通り。先日、最低賃金審議会は全国平均時間給1,000円達成を目指して、このコロナ禍においても最低賃金を上げることを決定しました。コロナの影響により大打撃を受けている業種にとっては、とても受け入れ難い決定となりました。

最低賃金に関しては、もちろんパート・アルバイト等時給者の時給額をチェックし、必要があれば昇給させます。また、稀に見受けるのですが固定残業代を支給している会社で、基本給部分を最低賃金に目一杯近づけ、固定残業代は多くの時間分を支給している会社もあるようです。この場合も基本給部分を昇給させ、かつ固定残業代も上げる必要があります。

有効な労使関係を築くためには、総額は変えずに基本給を上げ固定残業代を下げるなど行わないほうが良いでしょう。

総則関係

目的

前述の通り、就業規則から抜粋して別規程とすることから、就業規則には「給与・賞与に関しては、別に定める。」等の委任規定を盛り込んでおきます。給与規程側から見ると、目的条文に「この規程は、就業規則第〇条に基づき…」と、就業規則と紐づけるよう規定しますが、就業規則が改定された等の理由により、この条番号がずれていることがあります。

条を追加する際には条番号を変更するのではなく「第〇条の2」や「第〇条の3」と条と条の間に新たな条文を差し込む形にすると、条番号のずれを防ぐことができます。

適用範囲

まずは正社員に対して規程を適用しますが、就業規則には1)契約社員、2)パートタイマー、3)アルバイト、4)嘱託社員、最近では1)限定正社員等さまざまな社員のカテゴリーがあります。「この規程は、就業規則第〇条第〇項に定める正社員に適用し、その他の社員については個別の労働契約書による。」等と定めておかないと、正社員のための規定が全ての社員に適用されることになりかねませんので、注意が必要です。

給与の支払

昨今は現金支給するケースはごく少数派となっています。ほとんどが金融機関口座への振り込みですが、給与規程上「給与支払日が休日の場合は、その前日に支払う。」という規定を目にすることがあります。もう少し丁寧に「給与支払日が“金融機関等の休日”に当たる場合は、その“前営業日”に支払う。」とすべきです。休日とだけ規定すると「会社の休日」?と勘違いされますし、支給日が日曜日に当たる場合は「前日」の土曜日も金融機関の休業日ですので、このように規定してください。

加えて、振込先口座はあくまでも「社員本人が指定する」金融機関口座に限りますので、振込手数料が安いからといって、会社指定の金融機関にしないよう注意が必要です。

給与からの控除

法令に基づき、給与から当然に控除できるものは、1)源泉所得税、2)住民税、3)雇用保険料(本人負担分、以下同じ。)、4)健康保険料、5)介護保険料、6)厚生年金保険料(基金掛金)です。これ以外のもの例えば、社宅費、食事代、組合費や互助会費等を給与天引きするには、過半数労働組合か従業員代表と「賃金控除の労使協定」を締結(労基署への届出不要)する必要があり、勝手に給与から控除することができません。

端数処理

端数処理の規定とは、賃金額及び労働時間の端数を規定します。通達(昭和63年3月14日 基発150)では、端数処理について次のように対応して良いと説明しています。

①1か月における時間外労働、休日労働及び深夜労働の時間数の合計に30分未満の端数がある場合はこれを切り捨て、30分以上の端数は1時間に切り上げること。
②1時間当たりの賃金額及び割増賃金額に1円未満の端数が生じた場合、50銭未満を切り捨て、それ以上を1円に切り上げること。
③1か月における時間外労働、休日労働及び深夜労働の割増賃金額の合計に1円未満の端数がある場合は、②と同様に処理すること。

お勧めは「労働者有利」。支払うものは1円未満の端数を1円に切り上げ、控除するものは切り捨てるのが良いでしょう。

おわりに

本稿に記載する「規定」と「規程」の違いですが、「規定」は条文のひとつひとつを指し、「規程」は「規定」の集合体を指しますので、覚えていただき使い分けをしてみましょう。

紙面の関係から、本稿で全てをお伝えしきれませんでした。この続きは次回とし、割増賃金、昇給、賞与等についてご紹介いたします。

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