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パワーハラスメントの対応

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2021年11月24日

社会保険労務士法人味園事務所 特定社会保険労務士 味園公一

大企業では令和2年6月1日より適用されている改正労働施策総合推進法(いわゆる「パワハラ防止法」)が、令和4年4月1日より中小企業にも適用されます。改めておさらいをして、会社としてパワーハラスメント(以下、「パワハラ」という。)の相談に対してどのように対処したら良いかを見ていきましょう。

パワハラ法制化の内容

改正労働施策総合推進法では、職場におけるパワハラとは、以下の3つの要素をすべて満たすものと定義し、パワハラ防止のため、相談体制の整備等の雇用管理上必要な措置を講じることを事業主に義務付けています。

① 職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、
② 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
③ 労働者の就業環境が害されること

パワハラの定義の解釈

まず「職場において行われる」とは、単に職場内に限定しているわけではなく、職場の人間関係が存在していれば「職場」とみなすものであり、飲み会の場もこれに含まれます。次に「優越的な関係を背景とした言動」とは、上司が部下に対して行う言動が典型例となります。しかし同僚又は部下による言動でも、その者が業務上必要な知識や豊富な経験を有しており、当該者の協力を得なければ業務の円滑な遂行を行うことが困難であるものや、同僚又は部下からの集団による行為で、これに抵抗又は拒絶することが困難であるもの等の場合は、「部下から上司」、「同僚から同僚」の場合もあります。また「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」の部分が一番のポイントであり、業務上の指導との区別が問題となります。最後に「労働者の就業環境が害される」とは、パワハラの被害者本人の受け取り方により決定されるものではなく、平均的な労働者の感じ方から判断されるものです。

パワハラ対策の必要性

パワハラに当たるか否かは、曖昧な事例の中で判断を求められることが多いです。この場合、初動対応を誤ればトラブルがより深刻化する可能性が高くなります。また被害者からは「会社の対応が悪かった」ことを理由としてメンタルヘルス不調に陥ったなどと会社が訴えられ、加害者からは「調査や処分に配慮が足らない」と会社が慰謝料を請求されるケースもあります。

行政からは是正勧告、パワハラに未対応の場合は企業名を公表され、さらには紛争調整委員会の調停により金銭解決を余儀なくされるケースもあります。

性的言動のセクハラは、その事実があれば直ちに認定できますが、業務との関係性が高いパワハラは業務上の指導との区別が分かりづらく、その判断が難しいからこそ会社としての適正な対処が必要となるわけです。

業務上指導とパワハラとの違い

厚労省パワハラ指針のパワハラの判断要素は、「言動の目的、言動を受けた労働者の問題行動の有無や言動が行われた経緯や状況、業種・業態、業務の内容・性質、当該言動の態様・頻度・継続性、労働者の属性や心身の状況、行為者との関係性等」と多岐にわたります。

これをシンプルに考えると、言動が行われる「必要性」の程度と、目的達成のための「手段」の程度について、「手段」の程度が「必要性」を超えている場合にパワハラと認定されるというものです。「手段」が次の態様の場合はパワハラ認定の方向に一気に加速します。人格を否定する言動、他者の面前での言動、長時間また複数回にわたる叱責、大勢での叱責、暴力等の行使など。

社員からのパワハラ相談への対応

社員からのパワハラの相談を受けたら、次の対応を行います。
A.ヒアリング調査 ⇒ B.パワハラの有無の認定 ⇒ C.相談者、相手方への対応 ⇒ D.再発防止策を講ずる。
パワハラの相談を受けた際には、次のことに気をつけましょう。
① 相談者に対して「パワハラに当たらない」と直ちに判断をしないこと。
② 「あなたに原因があるのでは?」と相談者を責めないこと。
③ 門前払いをせずに、ヒアリング調査以降のステップを必ず踏むこと。

ヒアリング調査の留意点

ヒアリング調査の目的は、対象となる言動(行為)を特定することと、客観的証拠の有無を確認することです。その順序は、1)相談者、2)第三者、3)相手方の順に行うと良いでしょう。この第三者とはその場に居合わせて目撃していた者がベストであり、それ以外の者は推測の域や対象者の主観も含まれる可能性があるため実施すべきではありません。

ヒアリング調査は、ヒアリング対象者の文句、グチ、いいわけ、感想を聞くのではなく、あくまでも具体的な事実確認に徹して行います。「いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように」を明確にして記録していくことが大切です。

ヒアリング調査に当たる者は2名が良いです。ヒアリング対象者と1対1の場合は後に「言った、言わない。」の展開になることがあります。またヒアリング対象者から「調査者が高圧的だった。否定的だった。」などと言われぬために複数名が良いでしょう。各々が聞き手担当、記録担当と役割分担して行うと良いです。

パワハラ認定の際の留意点

パワハラの有無の判断(認定)は、ヒアリングした事実に基づいて慎重に行う必要があります。前述の通り、パワハラは曖昧な事例が多いので難しい判断を迫られるからです。

パワハラの対象となる行為を相手方が認めている場合には、ヒアリング報告書の記録や、ヒアリング時の録音記録を根拠として判断しましょう。逆に相手方が対象行為を認めていない場合は、相談者や第三者からの他の証拠から判断すべきです。

なお、認定は「パワハラがあったと認定できる。」、「パワハラがあったとは認定できない。」とすれば足ります。はっきりと「パワハラがなかった。」と判断することは、相談者を真っ向から否定することになり、別のトラブルが発生する可能性が高まります。

パワハラ相談者、相手方への対応

パワハラがあったと認定できた場合、相手方には懲戒規定に基づく処分、程度によっては口頭注意指導を行います。自認書、反省文や誓約書をとり本人が事実を認めている記録を残しておきます。加えて、必要があれば配置転換を行います。なお、懲戒処分結果の公表については、被害者・加害者のプライバシーや名誉の観点から氏名を除いた事実の公表のみにとどめるのが良いでしょう。

認定できなかった場合は、調査結果を関係者に報告をします。相談者から再調査を求められた場合は、新たな事実が出てきた場合のみ対応し、それ以外は「会社としては適正な対処を行った上での調査結果である。」として再調査は行わずとも良いです。

再発防止策について

再発防止策としては、以下を検討してみましょう。
① 就業規則、ハラスメント規程の作成・改定
② 経営者からのパワハラに対する会社方針の発表
③ 規程や相談窓口の全社員(パート、アルバイト、派遣社員を含む)への再周知
④ パワハラに関する研修会の実施

※参考:令和3年3月4日「パワハラ調査」研修会 杜若法律事務所 友永隆太弁護士

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