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雇用保険マルチジョブホルダー制度

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2022年01月19日

社会保険労務士法人味園事務所 特定社会保険労務士 味園公一

雇用保険において令和4年1月1日より「雇用保険マルチジョブホルダー制度」が新設されます。まったく新しい雇用保険被保険者資格となりますので、対象労働者も会社も新たな手続に対応する必要があります。今回はその概要と注意点を紹介します。

マルチジョブホルダー制度の概要

従来は主たる就業先(以下、「事業所」といいます。)での労働条件が、1週間の所定労働時間20時間以上、かつ31日以上の雇用の見込みがある等の適用要件を満たす場合に、雇用保険の被保険者となることができました。

これに対して、雇用保険マルチジョブホルダー制度は、複数の事業所で勤務する65歳以上の労働者が、そのうち2つの事業所での勤務を合わせて一定の要件を満たす場合に、雇用保険の被保険者(マルチ高年齢被保険者)となることができる制度です。

※厚労省の制度概要説明URL
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000838543.pdf

マルチジョブホルダーに対する雇用保険の適用

以下の要件を満たす労働者本人が、自身の住所地を管轄するハローワークに申し出ることで、申出を行った日から特例的にマルチ高年齢被保険者となることができます。

  • 複数の事業所に雇用される65歳以上の労働者であること。
  • 2つの事業所(1つの事業所における1週間の所定労働時間が5時間以上20時間未満)の労働時間を合計して、1週間の所定労働時間20時間以上であること。
  • 2つの事業所のそれぞれの雇用見込みが31日以上であること。

マルチジョブホルダーに対する失業給付

離職日以前1年間に11日以上の賃金支払いの基礎となった日数のある完全な月が6か月以上(11日に満たない場合は80時間以上)の勤務実績等あれば、失業給付(俗にいう「失業保険」)を受給することができます。

この失業給付は、被保険者であった期間に応じて30日分または50日分の一時金が支払われます。

マルチ高年齢被保険者となるための手続等

雇用保険の被保険者資格の取得や喪失手続きは、通常は事業主(会社)が行いますが、マルチ高年齢被保険者の場合、基本的に、雇用保険への加入を希望する労働者本人が手続を行う必要があります。

手続に必要な雇用の事実や労働時間などの証明は、労働者本人が事業主(会社)に依頼し、適用を受ける2社についての以下の書類を揃えて、住所地を管轄するハローワークに申し出ます(電子申請での届出はできません)。

  • 賃金台帳、出勤簿(原則として直近1か月分)
  • 労働者名簿
  • 雇用契約書、労働条件通知書、雇入通知書
  • 使用人兼務役員、事業主と同居する親族および在宅勤務者等は別途確認資料が必要

事業主(会社)の責務

  • 労働者から証明の作成・交付を求められた場合は、速やかに対応しなければなりません。
  • マルチジョブホルダーが申出を行ったことを理由として、不利益な取扱いを行ってはなりません。

マルチジョブホルダー制度に関する注意点

  • 制度は令和4年1月1日からスタートしますが、労働者本人が住所地を管轄するハローワークに申し出を行い受理された日からマルチ高年齢被保険者となるため、申出日より前に遡って被保険者となることはできません。
  • 2つの事業所のいずれも資格取得届、その他の添付書類が揃っていないと申出が受理されません。※資格喪失手続きも同様です。
  • 申出日(被保険者資格取得日)から雇用保険料が発生しますので、賃金締切日の途中から制度が適用される場合は、当該月の賃金は日割計算を行います。※資格喪失時も同様です。
  • 2つの事業所のうち一方を退職した場合、または2つの労働時間を合計しても週所定労働時間が20時間未満となった場合は、いずれの被保険者資格をも喪失しますので、2つの事業所分の各々の手続が必要です。
  • 労働者が申し出ない限りは、会社は資格取得も喪失も知り得ません。マルチ高年齢被保険者が2つの事業所のうち一方のみを退職した場合の他方の会社(引き続き雇用を継続している会社)では、労働者の申出がなければ喪失手続をとれず、雇用保険料の徴収・納付を続けていくことになりますので、特に注意が必要です。
  • マルチ高年齢被保険者となれば、育児休業給付、介護休業給付、教育訓練給付等も対 象となります。

※その他の注意点等は以下、厚労省Q&Aを参照ください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000139508_00002.html

おわりに

令和3年4月1日に施行された改正高年齢者雇用安定法により、70歳までの就業確保が努力義務化されました。健康寿命も進むなか高年齢者が元気に活躍できる環境を整備すること、労働者不足への対応が「雇用保険マルチジョブホルダー制度」新設の目的ではないかと考えます。

行政としても制度を新設したものの、現時点で対象者がどれだけいるのか、また今後どれだけ増加していくのかは予測が難しいようです。そのため5年後には制度の見直しを実施することになっています。

※参考:厚生労働省HP

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