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今から準備しないと大変な消費税のシステム対応

column

2019年01月16日

合同会社エムアイティエス代表 水谷哲也

消費税、単純な税率アップじゃない

2019年10月1日より消費税が8%から10%に上がる予定です。経営者のなかには消費税率が単純に8%から10%に上がるだけだろうと思っている人がいますが、システム的には滅茶苦茶大変です。今年は元号も変わるし、システム担当者からは勘弁してよと声が聞こえてきますが嘆いておらず、しっかり対策しましょう。

クラウド会計やパッケージなどを使っている場合はそれぞれのメーカーがバージョンアップしてくれるので心配はいりません。自社独自のシステムを入れている場合はITベンダーに依頼するなど早めの対応が必要になります。夏ぐらいにシステムの大幅な修正が必要なことに気がついても、ITベンダーはどこも手一杯で引き受けてくれるところがなくなるでしょう。

わが社は食料品を扱っていないから軽減税率なんて関係ないと思っている経営者もいますが、そんなことはありません。総務でとっている新聞や社員との茶話会用に購入する食料品や飲料は軽減税率です。上司のポケットマネーで購入するなら別ですが、経費とするならどんな会社でも軽減税率が影響してきます。

同じ税率8%でも内容が違う

現行の消費税8%と軽減税率8%は同じ8%ですが内訳が違います。現行の消費税8%は消費税率6.3%+地方消費税率1.7%ですが、軽減税率の8%は消費税率6.24%+地方消費税率1.76%となり、税率が異なるため納税額が異なってきます。ちなみにアップとなる消費税10%は消費税率7.8%+地方消費税率2.2%となります。軽減税率導入によって複数税率が混在することになってしまいました。

9月に納品した食料品が10月になってから返品されたらアップする前の消費税8%で処理しなければなりませんのでシステムで考える税率としては現行の8%、軽減税率8%、新しい消費税10%の3つを管理しなければなりません。消費税が5%から8%になったのが2014年で10年リースを組んでいるような場合、5%にも対応しなければならず4つの消費税をシステムとして管理しなければなりません。

同じ商品ですが売り先で消費税率が変わることもあります。塩化ナトリウム(食塩)を塩素などの原料として化学会社に売る場合、消費税は10%(工業原料)ですが、食品加工メーカーに売ると8%(食料原料)となります。つまり同じ商品でも売る相手の業種を考えて消費税を設定しなければならず、システム的な対応が必要です。

インボイス導入で個人事業主、フリーランスは課税事業者に

消費税がアップするけどウチは免税事業者だから関係ないと思っている事業者が多いのですが、いよいよ4年後の2023年10月1日から適格請求書等保存方式(インボイス)がスタートします。インボイスとは商品ごとに消費税率と消費税額などを記した請求書のことで適格請求書と呼ばれています。今なら売上にかかる消費税額から仕入れにかかった消費税額を引いて8%を掛けて消費税が算出できますが、複数税率となるためインボイスに基づいて仕入れにかかった消費税を正確に計算しなければなりません。

課税売上高が1000万円以下の法人、個人事業主、フリーランスは免税事業者で消費税の支払いが免除されています。2023年からは取引先から適格請求書(インボイス)の発行を求められることになります。取引先はインボイスがないと消費税として差し引けなくなるからです。

インボイスを発行するには2020年10月1日以降に税務署へ申請してインボイスに記載する登録番号を発行してもらう必要があります。登録番号をとるということは課税事業者(消費税をおさめますよ)ということです。特例措置として免税事業者からの仕入れについて2026年9月までは80%控除できますが、100%ではないのでインボイスが発行できないなら取引はしませんというところが増えるでしょう。法人取引が主な免税事業者は課税事業者にならざるをえなくなり、そのためにインボイスの発行ができるようにするなど、こっちのシステム対応も大変です。

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