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情報銀行で自分の情報を売る

column

2019年06月12日

合同会社エムアイティエス代表 水谷哲也

情報銀行という言葉を聞いたことがありますか?銀行という名前がついていますが、やり取りするのはお金ではなく情報です。

個人情報が宝の山に

GAFA(グーグル、アップル、フェースブック、アマゾン)ではサービス利用者がどんな検索をしたか、どんなサイトを閲覧したかを分析することで、利用者が何に興味をもっているのか、好みは何か類推しています。例えばいろいろなメーカーの洗濯機のページを見るような行動をしている利用者に対して洗濯機の広告を出せば購買率があがります。こういった個人情報はサービス提供側の企業にとっては宝の山となります。
今まではウェブサイトが対象でしたが、音声の個人情報が加わり始めています。AIスピーカーは呼びかけに応じますが、ずっと会話を聞いていないと応じられません。AIスピーカーの提供元がその気になればふだん何気なくしゃべっている内容を分析し、個人が何に興味をもっているかを類推できます。
個人情報を災害に活用する事例も登場しています。「通れた道マップ」があり、例えば震災時、情報が錯そうするため実際にどの道路が通れるのか分かりません。そこで実際に車が通った情報を集め、たくさんの車が通っている道は大丈夫ということで地図に掲載し、復興に役立てています。

個人情報の独占が問題に

GAFAなどのサービスを使う際に渡した個人情報が、何にどう使われているかがわからないという漠然とした不安がありましたが、そこに発生したのがフェースブックによる個人情報流出事件。流出したのは5000万人とも9000万人とも報道されています。
そこでEUでは特定の企業が個人情報を独占的に集めて商売するのはまかりならんと、「消費者の個人情報を消費者の手に取り戻す」と決め、2018年にはEU一般データ保護規制(GDPR)」が制定され、一定の歯止めがかかるようになりました。

個人情報を適切に扱う情報銀行がスタート

個人情報は適切に扱わないといけませんが弊害も出てきました。JR東日本がスイカ(Suica)の情報をビッグデータとして売ろうとしたところ、「35歳・男性・会社員」といった個人が特定できない情報にも関わらず、発売直後から「個人情報保護の観点で問題があるのでは?」という指摘が多数あり、販売中止に追い込まれてしまいました。 そこで自分で納得して個人情報を提供してもらいビッグデータとして販売し、対価を本人に支払う情報銀行の仕組みが考えられました。個人情報保護法が改正され情報銀行開設の道が開けられます。

情報銀行とは

情報銀行とは個人のデータを預かり、本人の同意を得たうえで第三者(他の事業者)などに提供するシステムです。自分で個人情報をコントロールするところがミソです。利用者はどこまでの情報を第三者に提供するかを選択することができ、提供先の企業も自分の意志で決めることができます。情報提供の対価についてはポイントや自分向けのお得な情報の形になります。情報を預けると利子のような対価がもらえるので、まさに銀行です。
ビッグデータでの提供以外に一人ひとりにあったワンツーワンマーケティングが考えられます。例えば、家族構成や家の間取り、ガスや電気の使用量を提供すれば自分に本当にあった料金プランやどの会社と契約すればよいか価格比較ができます。オーダーメードの料金プランを提供する会社も登場するようになるでしょう。また個々の医療情報を登録しておけば、全国どこでも治療のためのデータが引き出せる医療サービスが考えられます。高齢化がすすむなかで必要なサービスになっていくでしょう。

情報銀行は各社で社員を使った実験を行っており、実験が終わり次第、これから続々と登場します。

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