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今はないAI関係の新しい職業

column

2024年06月12日

水谷IT支援事務所代表 水谷哲也

米デューク大学のキャシー・デビッドソンが「2011年度にアメリカの小学校に入学した子どもたちの65%は、大学卒業時に今は存在していない職業に就くだろう」と語っています。現在でもユーチューバ、Vチューバ、ボカロPなど、昔はなかった職業が次々と登場していますが、これからはAI関係の新しい職業が登場していくでしょう。

AIエシカルデザイナー

エシカルとは「倫理的な」という意味です。各国で生成AIが作家の作品や新聞社の記事を無断で学習し利用しているという訴えが起きています。顧客対応などにAI導入する企業が増えていますが、倫理面の配慮をしておかないと訴訟リスクに直面します。プライバシー、透明性、公平性を考慮した設計を行い、倫理的な問題を未然に防ぐ倫理的なAIの導入をサポートする職業がますます重要になります。

AI監査官

AIが倫理的に利用されているか監査する仕事です。AIのアルゴリズムやデータセットを精査し、偏りや不正な操作がないかをチェックします。ブラックボックスになりがちなAIで何が行われているか人に説明し、また規制や法律に準拠しているかを確認します。企業が倫理的にAIを運用しているかを第三者として評価し、認証を提供することも行っていきます。

プロンプトエンジニア

AIで質問をいれる箇所をプロンプトと呼んでいます。プロンプトに入力された質問に基づいてAIは文章を生成します。チャットGPTを使いこなすには「よい質問」をしなければなりません。坂本竜馬が西郷隆盛と会った時に「大きくたたけば大きく響き、小さくたたけば小さく響く」と評価しましたが、AIも同じです。おそまつな質問をすれば、おそまつな返答しか返ってきません。よい回答が返ってくるように質問する能力をもつ職業がプロンプトエンジニアになります。

AI専業アクチュアリー

生成AI専用保険が登場しはじめました。著作権など知的財産権侵害、情報漏えい、ハルシネーション(幻覚 もっともらしい嘘)などへの対策や事故発生後の対応支援などが保険に含まれています。アクチュアリーという職業があり、保険料率・支払保険金額の算定などを行っていますが、これからはAI専業アクチュアリーが増えていきます。

AIデータキュレーター

AIの学習に使用されるデータセットを収集、整理、管理する職業です。データのサンプリングの偏りを排除しなければなりません。例えば台風の状況をSNSから把握するようなシステムを構築する場合、スマホの所有率、SNS利用率が高い地域に偏る可能性があり、補正が必要になります。バイアスなどが起きないように高品質で偏りのないデータを確保し、データの出所や品質を検証します。またデータのライフサイクル全体を管理し、古いデータを削除したり更新やクリーニングも担当します。

AIトレンドアナリスト

すさまじいスピードで発展しているAI技術の進化や市場動向を分析し、企業などに戦略的な助言を提供する職業です。新しいAI技術のトレンドなどを予測し、ビジネスチャンスを見つけ出します。研究論文や特許情報を分析し、競合他社の動向を把握することも重要です。

宮沢賢治「銀河鉄道の夜」にジョバンニがアルバイトで「活字拾い」するシーンが出てきます。今では活版印刷がほぼなくなりオフセット印刷やオンデマンド印刷となってしまったため本を読んでもイメージしにくいシーンになっています。現在は税理士という職業がありますがAIによる自動仕訳などがすすんでいくと、昔、税理士という仕事があったねと言われる時代になるかもしれません。

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