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2025年09月10日
水谷IT支援事務所代表 水谷哲也
AIが人間のように思考できるか、知能があるかを判定するために考えられたのが、チューリング・テストです。ところが、ChatGPTの登場によってこのテストをクリアできるようになり、新たにコーヒーテストが考案されています。
2025年8月、ChatGPTのアップデートがSNSで騒動になりました。ハルシネーション(もっともらしい嘘)を減らすためのアップデートでしたが、「前よりあっさりした回答になった」「温かみがなくなった」という感想や、なかには「唯一の友人を失った」といった声もありました。このことから、ChatGPTを問い合わせではなく、悩み相談や友人・相棒のように、自分に寄り添ってくれる存在として活用する人が増えていたことがうかがえます。
こうした背景から、AI依存症が問題になり始めています。AIとの会話にのめり込んだ結果、ベルギーでは30代男性が自殺する騒ぎがあり、アメリカでは息子が自殺したのはChatGPTのせいだと両親が訴える事件も起きています。
チューリング・テストとは、人工知能の判定テストです。別の部屋に機械または人を配置し、キーボードを使って会話を行います。会話している相手が機械か人かは分かりません。会話相手を人間と判定したときに、実際の相手が機械だった場合、その機械は人工知能(知的な存在)とみなされます。
このテストは、「人工知能の父」と呼ばれるアラン・チューリングが1950年に考案しました。チューリングは第二次世界大戦でドイツ軍の暗号「エニグマ」を解読した天才です。しかし、同性愛者であったため、当時違法とされていたイギリスで迫害され、最後は自殺してしまいます。彼の波乱万丈の人生は、戯曲『ブレイキング・ザ・コード』となり、日本では劇団四季などが上演しています。
相手が質問に適切な回答を自然に返し、悩み相談にも乗ってくれる。実はその相手がChatGPTだった。すでにChatGPTはチューリング・テストに合格しています。しかし、ChatGPTをはじめとする生成AIが知的な存在かといえばそうではありません。その原理は、膨大な大規模言語モデルから適切だと判断した回答を返しているだけにすぎないからです。
今、研究が進んでいるAGI(汎用人工知能)は、人間が実行できるあらゆる知的タスクを理解、学習、実行できることを目指しています。
アップル創業者のスティーブ・ジョブズは有名ですが、共同設立者にはスティーブ・ウォズニアックがいました。そのため「二人のスティーブ」と呼ばれています。ジョブズがマーケティングの天才だったのに対し、ウォズニアックはエンジニアの天才でした。二人の天才がタッグを組み、世界を変える製品を生み出していったのです。
このスティーブ・ウォズニアックが提唱しているのがコーヒーテストです。間取りや予備知識がない友達の家に上がり、友達にコーヒーを淹れられたらAGI(汎用人工知能)とみなすテストです。多くの人にとって、誰かのためにコーヒーを淹れることは簡単なことですが、これが人工知能にとっては非常に難しいのです。
家の中にどんな部屋があるかを認識し、まずはキッチンを特定しなければなりません。キッチンからコーヒーメーカー、豆、カップがどこにあるかを探し出し、コーヒーメーカーを起動する必要があります。電源の場所も見つけなければなりません。認識できなければ、場所を尋ねるコミュニケーション能力も求められます。
チェスや囲碁で世界チャンピオンを凌駕する人工知能は、特定の分野は得意ですが、人間にとって当たり前のことを行うのが最も難しいのです。果たしてコーヒーテストに合格するAGIはいつ登場するのでしょうか。
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