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2026年09月16日
社会保険労務士法人味園事務所 代表社員所長 味園 公一
令和8年10月1日より、短時間労働者に対する社会保険の適用拡大に合わせて「保険料調整制度」が開始されます。この制度は、新たに社会保険の加入対象となる短時間労働者の保険料負担を通算3年間軽減し、手取り収入の急減による就業調整を防ぐことを目的としています。今回は、保険料調整制度の概要について紹介します。
社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料、子ども子育て支援金)は原則として事業主と被保険者が折半で負担しますが、本制度を利用した場合、事業主が一時的に被保険者分の保険料の一部を追加負担することで、被保険者の負担割合を軽減します。
事業主が一時的に追加負担した保険料は、一定期間経過後にお支払いいただく保険料からその分が全額控除(調整)されるため、最終的に事業主が納付する保険料の総額は増加しません。
また、保険料負担が軽減されている期間中であっても、被保険者が将来受け取る年金額などの給付に影響を与えることはありません。つまり、被保険者の保険料負担が軽減したとしても、当該期間につき将来受給できる年金見込額が減額されることはありません。
保険料調整制度の対象となる事業所および被保険者には、明確な要件が定められています。
令和8年10月1日以降対象となることができる事業所は、令和8年10月1日以降に申し出により任意特定適用事業所となった事業所です。令和8年9月30日以前に任意特定適用事業所となっていた事業所は対象外となります。
また、令和9年10月1日以降は、今後の社会保険適用拡大により短時間労働者が新たに加入対象となる事業所が順次保険料調整制度の対象となります。適用拡大スケジュールに応じた対象時期は以下の通りです。
以下の条件をすべて満たす短時間労働者が対象となります。
負担軽減の割合は被保険者の標準報酬月額に応じて設定されており、標準報酬月額が低いほど軽減割合が大きく設定されています。
制度の利用期間は事業所単位で通算3年間です。制度利用の1~2年目は負担軽減効果が高く設定されますが、3年目になると軽減割合が半減し、4年目以降は通常の負担(50:50)に戻ります。例えば、標準報酬月額88,000円以下の被保険者の場合、1~2年目の負担割合は「被保険者25:事業主75」ですが、3年目は「被保険者37.5:事業主62.5」となります。
事業所が制度利用を開始してから3年で軽減が終了するため、途中で制度開始した従業員は軽減期間が短くなります。例えば、事業所の制度開始から1年後に加入した被保険者の軽減期間は、残りの2年間となります。被保険者ごとに3年間ではないので注意が必要です。
本制度の利用は任意であり、自動的に適用されるわけではありません。利用に際しては、事業主からの申請および対象者への事前説明などの実務対応が必要となります。
制度を利用するための手続きと必要な準備は以下の通りです。
事業所が制度の対象となった日から2年以内に「保険料調整開始申出書」を提出する必要があります。提出は事務センターへの郵送、または管轄の年金事務所への郵送・窓口持参により行います(電子申請は不可)。
なお、任意特定適用事業所となる場合は、あらかじめ同意対象者の2分の1以上の同意を得て「任意特定適用事業所申出書」等の提出が必要です。
保険料調整制度の適用申請にあたり労働者の同意は必要とはされていませんが、2年経過後および3年経過後に被保険者本人の保険料負担が段階的に増加するため、事前に丁寧な説明が不可欠です。本来の負担額や制度の趣旨を理解してもらうことで、将来的なトラブルや不審感を防ぐことができます。
保険料調整制度は、短時間労働者の社会保険加入に伴う手取り減少を抑え、就業調整を防ぐための有効な支援策です。事業主にとっては一時的な立替が発生するものの、最終的な費用負担の増加なしに人材の確保や定着、シフトの安定化を図ることができます。自社が対象となる時期を把握し、対象となる従業員の抽出や社内への周知など、スムーズな導入に向けた事前準備を進めておくことをお勧めいたします。
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