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column
2026年05月13日
水谷IT支援事務所代表 水谷哲也
かつてフロッピーディスクに代わり普及したZipやJazなどの磁気メディアは、技術革新とともに姿を消しました。ブルーレイも生産終了の動きがあり、デジタルデータの「読み取り不能リスク」が浮き彫りになっています。そんななか、百年耐えうるM-DISCが登場しています。
「Zip」と聞いて、何を思い浮かべるでしょうか。多くの方はメールに添付する「圧縮ファイル」を想像されるかもしれません。しかし、かつてフロッピーディスクに代わる記録媒体として普及した「Zip」というディスクが存在しました。
当時のフロッピーディスクの容量は、わずか1.44MBでした。現在のスマートフォンで撮影した写真は1枚で数MBから数十MBにおよぶため、もはやフロッピー1枚には収まりません。こうした「より大容量の媒体を使いたい」というニーズから生まれたのがZipです。サイズは3.5インチフロッピーとほぼ同等ながら、100MBのデータを記録できました。専用ドライブが必要でしたが、本体が比較的安価だったこともあり、1990年代後半に広く普及しました。しかし、2000年代に入ると、より利便性の高いメディアの登場により次第に姿を消していきました。
同時期には、他にも「Jaz」や「MO(光磁気ディスク)」といった媒体がありました。特にJazは、ハードディスク技術を応用していたためZipよりも圧倒的に書き込み速度が速く、1GBという大容量を誇りました。しかし、CDやDVDのメディア価格が急激に低下したことで、これら独自の規格は市場から淘汰されていきます。
データの保存先選びは非常に難しい問題です。2025年2月、ソニーが録画用ブルーレイディスクの生産終了を発表しました。ブルーレイが即座になくなるわけではありませんが、今後は「日常的なメディア」から「趣味や特定の用途のためのメディア」へと立ち位置が変わっていくでしょう。
ここで注意すべきは、ブルーレイの耐用年数が一般的に10年から30年といわれている点です。記録した写真や動画が将来読み取れなくなるリスクに備え、別の媒体へ移行(マイグレーション)していく必要があります。
インターネットによるストリーミング配信が主流となった今、物理メディアの必要性は低下しています。1998年に登場した初代iMacがフロッピーディスクドライブを廃止したことは当時大きな衝撃を与えましたが、その後、パソコンから光学ドライブ自体が消え、現在はストレージやクラウドが主流となりました。
そんななか、数百年にわたる長期保存を目的とした「M-DISC」が登場しました。これは光・熱・湿度による経年劣化に強く、ブルーレイやDVDの耐久性を飛躍的に高めたものです。最大の特徴は、一般的なドライブで読み書きができる点にあります。「生涯保存」「100年ディスク」をうたうこのメディアは、記録膜に金属系素材を採用しており、レーザーで物理的な凹凸を彫り込むことで圧倒的な耐久性を実現しました。企業の公文書など、長期保管が求められる用途での活用が期待されています。
デジタルの寿命が100年とされる一方で、1000年単位の保存を可能にするのは「和紙」です。一般的な洋紙の寿命は100年程度といわれますが、奈良の正倉院には西暦702年に作成された戸籍が今もなお残っています。
1300年という長い歳月を経てなお情報を伝え続けるその姿は、ZipやJazのように再生機器の消滅を心配する必要も、媒体を移し替える手間もありません。デジタル全盛の時代、1000年先に残すには「アナログ」かもしれません。
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