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被扶養者認定の取扱いについて

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2026年02月18日

社会保険労務士法人味園事務所 代表社員所長  味園 公一

令和8年4月から、健康保険の被扶養者認定は「実績ベースの収入見込み」ではなく、「労働契約内容に基づく見込み収入(残業代などを除きます。)」で判断する取扱いに変更されます。今回は、被扶養者認定の取扱いの変更内容について紹介します。

変更の背景と目的

これまでの被扶養者認定は、過去や現在の収入、さらに今後の収入見込みを総合して判断していました。残業代などの所定外賃金も収入見込みに含めるため、繁忙期の一時的な増収で扶養から外れる不安があり、いわゆる「年収130万円の壁」が就業調整の要因となっていました。

今回の改正は、この不安定さを解消するものです。「労働条件通知書」や「雇用契約書」など労働契約内容が確認できる書類(以下「労働契約書」といいます。)で定められた賃金や所定労働時間・日数を基準に、年間収入を見込む方式へ変更します。これにより、事前に見通しを立てやすくなり、被扶養者認定の予見可能性が高まります。

新しい取扱いは、令和8年4月1日以降の認定から適用されます。ただし、令和8年4月1日以降に、令和8年4月1日より前に遡って認定の申請をする場合は、従来の方法で判定します。いわゆる「認定日ベース」で考えることに注意が必要です。

新しい取扱いのポイント

判定の軸は「労働契約書の内容に基づく見込み収入」です。労働契約書に記載された時給・労働時間・勤務日数・通勤手当・諸手当・賞与(規定がある場合)などをもとに、年間収入を算定します。労働契約書に基づく見込み収入が基準額を下回れば、原則として配偶者等の被扶養者と認定されます。 労働契約書がない場合には、新しい取扱いでの判定ができませんので、従来どおり、勤務先から発行された収入証明書や課税(非課税)証明書などにより年間収入を判定します。

年間収入の基準額

年間収入の基準額は、次のとおりです。

  • 原則:130万円未満
  • 60歳以上または一定の障害のある方:180万円未満
  • 19歳以上23歳未満の方(被保険者の配偶者を除きます※1):150万円未満
  • ※1:被保険者の配偶者の場合、当該年齢であっても130万円未満(一定の障害がある場合には180万円未満)

「給与収入のみ」の方が対象

新しい取扱いで年間収入の判定ができるのは「給与収入のみ」の方です。年金収入や事業収入、失業等給付など給与以外の収入がある場合は、従来どおり、勤務先から発行された収入証明書や課税(非課税)証明書などにより年間収入を確認して判定します。

被扶養者となる方が「給与収入のみ」である旨の申立てを行うことが前提となりますが、この申立て及び確認は、被扶養者(異動)届の「扶養に関する申立書」欄への記載、または本人作成の申立書の添付といった方法で対応しましょう。

残業代の扱い

労働契約の締結段階で金額の見込みが難しい「残業代」などは、原則として年間収入に含めません。被扶養者認定の判定時点で実際に残業が発生していたとしても、労働契約書上に明確な規定がなければ、当該年度は一時的な収入変動とみなし、労働契約書に基づく見込み収入で判定します。これにより、収入調整(残業代調整)のために年末間近に就業調整を行う方が多くなるといった事態が解消されることに効果が期待されます。

臨時収入(賞与や一時金など)の扱い

被扶養者として認定された後に、当初見込んでいなかった臨時の賞与や一時金の支給によって、結果的に年収が基準額を超えたとしても、社会通念上妥当な範囲の臨時収入であれば、それを理由に認定を取り消す必要はありません。

ただし、臨時収入により実収入が基準を大きく上回り、契約上の賃金が不当に低く記載されていたことが明らかになった場合には、被扶養者認定が取り消される場合があります。

認定後の確認と適用開始日

認定年度中に追加の確認を行う必要はありませんが、翌年度以降は少なくとも年1回、保険者(協会けんぽや健保組合)により被扶養者の要件を満たしているかどうかの確認が行われます。

この際も、原則として労働契約書に基づいて確認されますが、実収入との乖離を確かめるために、収入証明書や課税(非課税)証明書などの提出を求められる場合が考えられます。

おわりに

今回の改正は、残業代など労働契約当初に見込むことが難しい賃金を除外することで、一時的な増収に左右されづらくなり、被扶養者認定をより安定的で予見可能なものにするための制度です。ただし、契約内容と実収入の整合性は引き続き重要です。臨時収入で基準を超えても直ちに取消しにはなりませんが、労働契約書の記載が実態と乖離して不当に低い場合は見直しの可能性があります。

被扶養者になる方の労働契約書を提出させることから、他社の労働契約書フォーマットでは、所定労働時間・日数・時給などが不明確で見込み収入が確認できない場合も想定されます。加入している健康保険組合に所定の現況表(配偶者の収入状況などを確認するための添付書類)がある場合には、当該現況表の内容を踏まえて労働契約書の記載内容を検討しておくと良いでしょう。

その他、税制面での各種扶養控除に関する改正や年末調整対応とあわせて、税扶養や社会保険扶養の取扱いが複雑化しています。今回の取扱い変更を機に、「労働契約内容の透明化」と「扶養認定後の適切な確認」を徹底するとともに、社員の理解を深めるための制度周知や社内勉強会を実施することも望ましい取り組みでしょう。

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