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第131期 小さな都市で大きな産業を担う、世界を映す「鏡」—丹陽

column

2026年04月24日

利墨(上海)商务信息咨询有限公司  南 みなみ

先日、丹陽市でメガネを作る機会がありました。その際に、丹陽市が「メガネの街」として、世界のレンズ生産の約50%を占めていること、新たな大規模開発が進んでいることも知りました。今回は、そんな丹陽市についてご紹介いたします。

丹陽市について

概要

丹陽市は、中国東部の経済的中心地・江蘇省に位置する県級市です。行政上は鎮江市の管轄にあり、南京から約68キロメートル、上海から約200キロメートルの距離にあります。長江デルタ地帯の要衝として、古くから交通の重要な結節点として機能してきました。

面積は約1,047平方キロメートルで、東京都の約半分の広さです。常住人口は約100万人で、日本の地方中核都市と同程度の規模です。

「丹陽」の地名の歴史は古く、「齊梁故里」とも呼ばれています。春秋戦国時代には呉国の都の一つが置かれ、その後、「曲阿」などの名称を経て、唐代の天宝元年(742年)に現在の「丹陽」と改名されました。1987年に県から市へ昇格し、現在に至っています。

経済

2025年の域内総生産(GDP)は1,600億元を超え、工業生産高は2,500億元を超えています。製造業を中心とした堅実な経済基盤を持ち、発展を続けています。

なぜ丹陽は「世界最大のメガネ産地」になったのか

丹陽が世界的に眼鏡産業で知られるようになった背景には、人の移動と時代の追い風が重なったことにあります。

その起源は1960年代後半にさかのぼります。当時、中国の上海や蘇州の国営工場で働いていた技術者たちが、故郷の丹陽へと戻り始めました。彼らが持ち帰った研磨・加工技術をもとに、司徒鎮などを中心に小さな工房が誕生しました。当初は手作業で行われ、研磨剤で顔が赤く染まったことから、創業者たちは自らを「赤顔関公」と例えたといいます。

転機は1986年に訪れます。丹陽市政府は、鉄道の要衝である丹陽駅前に全国初の眼鏡専門卸売市場を設立しました。「品質は有名ブランドに近く、価格は半分」と評判が広まり、全国から買い付け業者が集まりました。これにより、丹陽は単なる製造拠点から「流通の中心地」へと発展しました。



写真:筆者撮影


また、技術革新も重要な転換点です。1990年代、外国製のデザイン性の高いフレームの流入により、丹陽の眼鏡産業は一時危機に直面します。これを打破したのが、1996年に地元企業が国内で初めて樹脂レンズの量産に成功したことです。従来のガラスレンズに代わり、軽量で割れにくい樹脂レンズへの移行は、産業構造の大きな変革となり、丹陽の国際競争力を飛躍的に高めました。

こうした歴史を経て、現在の丹陽には眼鏡関連企業が1,600社以上、従業員数は約6万人に上ります。レンズの年間生産量は4億個以上で、中国国内の約75%、世界の約50%を占めています。フレームの年間生産量も1億個以上です。さらに、眼鏡購入のための観光客は年間120万人以上に達し、産業と観光が融合した独自の経済圏を形成しています。

丹陽の未来展望

現在、丹陽は「製造の都」から「デジタル・スマート都市」への変革期にあります。  

丹陽金茂眼镜城プロジェクト

丹陽駅前で進行中の大規模複合開発です。総面積は住宅・付帯施設が66万平方メートル、産業関連施設が20万平方メートルに及びます。ホテル、企業本部ビル、商業施設、眼科病院、フィッティングモデルセンター、「運河1958文化園」などの文化施設も計画されており、商業部分は2026年の開業予定です。

このプロジェクトは、丹陽の眼鏡市場の第四世代と位置付けられ、単なる商業施設を超え、産業・観光・文化の融合を目指す新しい街づくりとなっています。



写真:筆者撮影

スマートグラス・先端技術の推進

丹陽は、伝統的な光学技術を活かし、次世代ウェアラブル端末分野への進出を加速しています。高新技術産業開発区では、ARやVRの研究開発が進行中です。また、5度単位の精密検眼システムなど、従来の標準(25度単位)を覆す技術革新も進んでいます。

産業のスマート化・デジタル化(智改数転)

丹陽市は、「スマート化・デジタル化」を積極的に推進しています。スマート工場導入により、従来数時間かかっていたカスタムレンズの研磨が40秒で完了するなど、生産効率が向上しています。さらに、電子商取引(EC)の展開や動画配信による販売促進も活発です。

第15次五か年計画(2026-2030年)の方向性

2026年1月に承認された計画では、丹陽は「スマート製造で名高い都市」への転換を明示しています。詳細な数値目標はこれからですが、2026年度には域内総生産(GDP)成長率5%前後を目標としています。

まとめ

丹陽は、人口約100万人の小さな都市ながら、世界の眼鏡レンズの半分を生産し、「大きな産業」を担う稀有な都市です。その歩みは、1960年代の手作業から始まり、1986年の専門卸売市場の設立、1996年の樹脂レンズの国産化を経て、世界基準へと成長しました。今後は、スマートグラスやデジタル技術への挑戦を通じて、「世界の工場」から「世界の視界を創造する都市」へと進化し続けます。

小さな都市が大きな産業を築き、その可能性を世界に映し続ける丹陽の未来に期待が高まります。

【引用情報】※日本からのアクセスが制限されている可能性があります。

丹阳市人民政府公式サイト

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